Profire
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旧総務部職員課
左近 亮太
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NPO法人エル・コミュニティ代表
竹部 美樹
今回の座談会に参加したのは、「鯖江市地域活性化プランコンテスト」やIT×ものづくりの拠点「Hana道場」の運営など、16年以上にわたり鯖江市のまちづくりに関わり続けているNPO法人エル・コミュニティ代表の竹部美樹さん。民間企業から転職した総務部職員課の左近亮太とともに、鯖江市役所の変化や働くことの可能性を語ります。
TALK 01 まずは自己紹介からお願いします。
総務部職員課の左近です。鯖江市役所には2012年に入庁しましたが、元々は民間企業(製造業)に勤めていました。自社の製品がどのように人の役に立っているのかあまり実感が持てなくて、公共の福祉に貢献できる自治体の仕事に魅力を感じるようになったんです。それまでは福井市に住んでいましたが、結婚して鯖江市に引っ越し、地域のために役に立ちたいという思いもあり、鯖江市役所を選びました。
私は鯖江市出身ですが、短大卒業後に東京のITベンチャー企業で働いた後、2008年から地元鯖江市に関わるようになりました。全国各地の学生たちが鯖江の未来をより良くするプランを発表する「鯖江市地域活性化プランコンテスト」の開催をはじめ、IT×ものづくりの拠点「Hana道場」を作って子どもたちへのプログラミング教室を運営したり、鯖江のまちなかを散歩するイベント『さばぷら』を企画したりなど、鯖江をフィールドにさまざまな活動を行っています。
竹部さんはほぼ全員の職員を知っているんじゃないかと思うほど、鯖江市役所との関わりが深いですよね。
私が鯖江市を盛り上げたいと思うようになったのは、まだ東京で働いていた頃。前市長のブログを読み、「私も地元で何かできることがあるかも!」と思うようになったんです。鯖江の実家に帰省した時に、たまたま前市長とお会いできてその思いを伝えたところ、「鯖江市のために何かやりたいことがあれば、いつでも市役所に立ち寄ってください」と言っていただき、交流がはじまりました。私自身も2010年に鯖江にUターンしてさまざまな事業を提案させていただくようになり、職員の方にもいつもサポートいただいています。
竹部さんがUターンした頃の市役所はどうでしたか。
その頃は正直、民間企業と比べてメールの返信はゆっくりですし、考え方も「お役所的」なところがあったように思います。電話やメールで済むことでもわざわざ市役所に呼び出されることが多かったので、「私はこの打ち合わせに行き来する時間、給与が発生するわけでもないし、ガソリン代も自腹です。電話で済むことなら簡単に呼び出さないでください」とクレームを入れたことがありました(笑)。
大切なことですよね。私も民間で働いていたので、その感覚はよくわかります。
でも、今では驚くほど市役所全体の意識が変わりました。この10年くらいで市役所と民間企業がやりとりする機会が増えたこともあり、メールの返信は早いしフットワークも軽い。職員の方もいろんなツールを使いこなしてやりとりしてくださるので助かっています。
「役所だから今までと同じ」ではなく、世の中もどんどん変化しています。選ばれるまち、選ばれる自治体になっていくためにも、職員一人ひとりが社会の変化に敏感になり、民間の仕事のスピードや感覚についていくことが大切だと思っています。
TALK 02 職員との距離の近さを感じるのはどんな時ですか?
私たちの団体が毎年開催している「鯖江市地域活性化プランコンテスト」は、いつも市役所の若手の職員にサポートいただいています。運営メンバーは大学生が中心なのですが、学生たちが主体的に動けるように、黒子のようにさりげなくコミュニケーションを取ってくださるのが嬉しいですね。学生たちにとっても職員の方は優しいお兄さん・お姉さん的な存在。「学生と職員」ではなく仲間意識を持ってくださるのが、ほかの自治体ではあまりないことだと感じています。
鯖江市は1995年にアジアで初めて開催された「世界体操選手権大会」をきっかけにボランティアによる「市民活動」の動きが高まり、「市民主役条例」が制定されるなど、市民がまちづくりの主役という風土が根付いています。そのため、「行政は黒子に徹する」という意識が浸透しているのだと思います。
あとは職員の方はプライベートでも積極的に市民が主催するイベントに参加していますよね。私が企画している『さばぷら』というまちなかを散歩するイベントにも、ほぼ毎回、副市長が参加してくださっているんですよ。
「現場を見る」ことは大切ですよね。まちでは今どんな動きが広がっているのか。実際に参加することで、より市民の方と深く関わるきっかけが生まれると思います。
TALK 03 鯖江市役所では市民と接するときにどんなことを心がけていますか?
「傾聴」の姿勢です。研修などを通して、どんな問い合わせやご要望も一旦受け止めてから対応することを徹底しています。市民のみなさまに対してはもちろん、職員間でも傾聴する環境を浸透させることで、相談しやすい環境をつくっています。
たしかに。せっかく相談しても「自分には関係ない」といった態度をとられると悲しくなりますよね。鯖江市役所ではいつも、「ちょっと無理難題かもしれないな」と思うことでもしっかり聞いてくださるのでありがたいです。
市民の声にしっかり耳を傾けることで、何にお困りなのかニーズを聞き出すことができますし、それを行政サービスに活かすことができます。職員一人ひとりの小さな積み重ねが、「住み続けたい」と思えるまちの実現につながっていくのではないでしょうか。
より良い市民サービスを実践するため変化を続けてきた職員たち。
後編では鯖江市役所で働くことでどのような可能性が広がるのか、より具体的に語っていただきます。
【後編に続く】